By ダニエル スペイト (XTERRA エリート選手)
2006 XTERRA Japan Championship
8月26日(土)丸沼
スイム1.2k , MTB25k , トレイルラン10k

今年で3年目を迎えたXTERRAジャパン・チャンピオンシップ、舞台は群馬県の丸沼。標高1400mに広がる国立公園の大自然で自己との闘いが繰り広げられる。レース当日(26日)午前、丸沼周辺が霧でかすみ、これから過酷なレースに挑む挑戦者達に行く先が容易でないことを告げている。ここ丸沼のMTBコースは超テクニカル・コースとして悪名高い。どろんこ、転倒、一回転、等々覚悟しなければならない。いや、それこそがXTERRA風遊び方なのだろう。

今年のXTERRAジャパンには、日本以外にアメリカ、オーストラリア、シンガポール、台湾等から10名のエリートと134名のエイジグルーパーが参加。またリレーやキッズ/ライトの選手など合わせると総勢180名が丸沼に集結した。午後1時、チャンピオンシップとリレー選手が太鼓の音を合図にスタート。そして、30分後には、キッズ/ライトがスタートした。太鼓は日本古代から伝わる文化であるが、時に戦国時代のサムライ合戦を想像させるような勇ましさを感じる。その太鼓に合わせ、まるで長い戦(いくさ)に出る戦士を労うかのように尺八が美しいハーモニーを奏でた。

XTERRAジャパンのスイムコースは、透明度抜群の丸沼湖で1週600mのコースを2周回するコースだ。エリートのスイムトップは、オーストラリアから出場のピーター・ガードナー選手。そのすぐ後ろには、エリート女子、斉藤磨実選手、井上由佳子選手が続く。スイム終了後は短いが石がゴロゴロと転がる湖畔をとおりトランジッションへ向かう。そして、XTERRA ジャパンの名物MTBコースへ入っていくのだ。MTB最初の難関は、会場の裏山コース。10分程の距離だが、なかなか簡単にはバイクを走らせてくれない。その裏山を終えるとまた会場へ戻り、今度はタダでは帰ってこれない深い森林の中「本コース」へ入っていくのだ。

MTBコースへ入って間もなく、順位が入れ替わった。トレイルには草や葉っぱの陰に潜む木の根っこ、石、大きな丸太が方々にころがり選手を苦しめる。それだけでなく、こぶ、小川、容赦なく飛び出ている木の枝など、どこを見ても障害物だらけである。一瞬の隙も与えないこのチャレンジングなコースに闘争心が湧き起こる。多くの勇敢なアスリートが、昔から全く手の加えられていない原生林に果敢に挑戦をしては転倒を繰り返している。かすんだ森林の中でどこからともなく自己に降りかかってくる戦いはまるで忍者が仕掛けた罠のようである。安全派のアスリートは、危険な個所は下りて押している。しかしながら、MTBを押していても細い小道の斜面では自分の足場を確保するのさえ一苦労である。今ではXTERRAジャパンの恒例行事にもなった「池ポチャ」に今年も数名の選手がはまった。細い山沿いの小道を走る時、バランスを崩すと山と反対側に待ち構えている池にバイクごと“ポチャリ”と落っこちてしまうのだ。「池に落ちたくない」と思えば思うほど池に落ちる、曰く付のコースなのだ。この容赦ない洗礼もXTERRAの醍醐味の一つである。

エリート男子のレースは、アメリアのコートニー・カーデナス選手が巧みなMTBスキルでスイム上位選手を次々と追い抜きトップに踊り出た。この幽霊林を通り抜ける時、彼のタイヤのきしむ音は歓喜の叫びにさえ聞こえる。カーデナス選手はスイムでも上位で上がってきたため、得意のMTBでは後続にかなりの差をつけて首位を走っていた。しかし彼の最大のライバルである高橋泰夫選手(2004年デュアスロン・チャンピオン)と武井きょうすけ選手(FORZA)が虎視眈々と追いかけていた。そして、カーデナス選手が山頂へたどり着くころには高橋選手がすぐ直後に迫っていた。その後、カーデナス、高橋両選手は互いにほとんど乗って走ることが出来ないコースを肩が触れ合うほどの距離で激戦を繰り返した。カーデナス選手の卓越したMTBスキルが彼をもう一度トップに立たせた時、不運な事態が起こった。カーデナス選手がいきなり大きく転倒し、そのまま彼の腕が大木の根っこに挟まり動けなくなってしまったのだ。その大クラッシュを見た高橋選手は、自分のレースを一旦中断し、動けなくなったカーデナス選手を助けに行った。高橋選手のスポーツマン精神は、この過酷なレースの中でも生きていた。大自然と対峙するこの競技、時にはライバル同士が自然と闘う戦友として助け合うことになる。高橋選手とカーデナス選手の同じ競技を愛する者同士の美しい友情がそこにあった。

レースに復帰した両選手だが、高橋選手はMTB終盤コースをさらに加速し、トップでトランジッションへ帰着。一方、カーデナス選手は3位につけていた武井選手に最後の裏山コースで交わされ3位でMTBを通過。武井選手は、バイク・スプリット1位の見事な走りで最後のトレイルランに入った。ランに入っても高橋選手のスピードは全く衰えることはなかった。その姿はまるで刀が風を切る時のように優雅でシャープな走りだった。結局、高橋選手は後続に4分の差をつけて初優勝テープを切った。2位は武井きょうすけ選手、3位コートニー・カーデナス選手。また、エリート4位、5位にはオーストラリアのダニエル・スペイト選手、ピ−ター・ガードナー選手が入った。

女子のレースは、アメリカのジェイミー・ウイットモア選手がMTBに入ると、手際よく先を行く日本のエリート選手2人(斎藤、井上選手)を捉えて行く。またスイムを4位で終えたメリッサ・トーマス選手(アメリカ)も得意なMTBでぐいぐい前進し、ウイットモア選手に続く2位(8分差)でT2に戻ってきた。その後、岩、崖、ぬかるみ、ロープで上り下りする急坂、そして太ももまではまってしまう沢セクションなど、様々な障害物がラインナップされたランコースへ。しかし、XTERRA世界チャンピオンのウィットモア選手は、その難コースも物ともせず、更にリードを広げ貫禄の3冠を達成した。2位にはトーマス選手、3位、4位は日本のエリート斎藤選手、井上選手が入った。3年連続優勝でXTERRAジャパンのクイーンの座を不動の物にしたジェイミー・ウイットモア選手。果たして、今後彼女からアジアの王冠を奪う強い選手は現れるのだろうか?それは2007年に開催されるXTERRAジャパンの楽しみにしておこう。

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